社会保険労務士法人山口事務所
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残業対策のご案内
御社の抱える問題・リスクを診断し、
最適な残業対策をご提案します。
しかし、「みんなが残業しているから帰りにくい」「一緒に食事に行く予定だから」「残業代を稼ぐため」
などと、必要がないのに残って仕事をされては人件費が無駄に増えて、社長さんとしては困りものです。
似たような裁判例から、残業を禁止する場合に会社がどのようなことに注意しなければいけないのかをご紹介します。
この事件は残業禁止命令に違反して時間外労働をしていた労働者が残業手当の支払をめぐって会社と争った事案です。
≪事件の概要≫
この音楽院は音楽家を養成する専門学校です。
当音楽院では36協定(時間外・休日労働に関する協定届)を締結・届出していないこともあり、従業員に対し時間外・休日労働を禁止し、残務がある場合には役職者に引き継ぐことを命じ、これを周知徹底していました。
この業務命令に反して時間外労働をしている場合には、直ちに取りやめるよう指示し、業務命令に反して行った時間外労働に対する手当は、支払っていませんでした。
このような取扱いに対して、従業員(管理職を含む)の8人が残業手当を請求した事件です。
≪裁判所の判断≫
「使用者の明示の残業禁止の業務命令に反して、労働者が時間外又は深夜にわたり業務を行ったとしても、これを賃金算定の対象となる「労働時間」※1と解することはできない。」
と判示し、残業禁止の業務命令に反した労働時間の残業手当の請求を認めませんでした。
つまり、この事件では裁判所は残業手当を支払う必要はないと判断したのです。
この事件で残業手当の請求が認められなかった理由は次の2点を従業員に周知し、徹底していたことです。
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一般の会社では残業を禁止することはできても、残務を役職者に引き継ぐことはなかなか難しいでしょう。
しかし、ただ単に残業を禁止しているだけでは、労働時間となる可能性が高くなります。
特に業務量が、通常の所定労働時間内で処理することが明らかに困難な場合には、「黙示の残業命令」※2があったと考えられ、残業手当の支払いが必要となります。
残業を禁止する場合には、所定の時間内で仕事を終えられるように担当業務を調整する等の相応の対策をとらなければなりません。
どうも無駄な残業が多いと感じているのでしたら、いきなり残業禁止にするのではなく、まず「残業許可制」を活用してみることをお勧めします。
残業許可制というのは、残業を削減する方法の一つです。
残業が必要な場合には事前に上司に届け出て、承認された場合にだけ、残業が出来るという制度です。
労働時間、残業手当(割増賃金)の問題は、労働基準監督署の調査でも毎年、法違反の上位にあがっています。
最近は、誰でも簡単に法律等の情報を手に入れられるため、労働者からの労働基準監督署への申告による、立ち入り調査も増加しています。
ニュースでも度々取り上げられていますが、遡っての残業代支払が指導されるケースも後を絶ちません。
少しでも不安なところがある場合には、安易に考えず、きちんとした対応をすることをお勧めします。
※1 労働時間
「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」(平12.3.9最高裁:三菱重工業長崎造船所事件)
※2 黙示の残業命令
「教員が、使用者の明白な超過勤務の指示により、又は使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働になる。」(昭25.9.14基収2983号)
作業服への着替え等の時間が「労働時間」となると判断した
「三菱重工長崎造船所事件」(最高裁平成12.3.9判決)では、
「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、
当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、
当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、
当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当する。」
と判示し、割増賃金の請求を一部認めました。
当該造船所の就業規則等では、 次のように定められていた。
これらに違反した場合には、就業規則に定められた懲戒処分又は就業の拒否が行われていました。
また、成績考課にも反映されて賃金の減収になる場合もありました。
なお、更衣等の時間は労働時間として扱っていませんでした。
これに対し労働者が、所定時間外に行った行為の時間は労働時間に該当する旨主張し、割増賃金の支払いを求めた事件です。
≪裁判で認められた時間≫※
≪裁判で認められなかった時間≫
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※≪裁判で認められた時間≫ について
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当事務所が行っている残業対策の一部をご紹介
「労働時間」については、労働基準法にも、どのような時間が労働時間になるかの定義はなく、作業服や制服に着替える時間が労働時間に当たるか否か、明確な基準がありません。
しかし、上記最高裁判例により一定の判断基準が示されていますので参考にできます。
※参考
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)
平成29年1月20日に労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)が策定され、労働時間の考え方や労働時間の適正な把握の方法について具体的に示されました。
一般的に起こり得る事例から具体的な対応方法をいくつかご紹介します。
『着替えの時間が、化粧をしたり、雑談をしたりで長くて困る』
業務(作業)終了後にタイムカードを打刻してもらい、着替え等に必要な時間を、例えば5分とか10分というように決めて、その時間に応じた時間外手当を支払う。
『制服に着替える時間を労働時間としていない』
制服に着替える場所を、会社の更衣室でも自宅でも各従業員の自由にしてあれば、場所的拘束性がないため、着替えの時間は原則として労働時間になりません。
ただし、作業服が油まみれやホコリだらけで、そのような状態で電車やバスで帰宅することは他人に迷惑を掛ける等、不都合が生じるような場合には、「通勤が著しく困難」と判断され、使用者からの命令がなくても、着替えをすることを「余儀なくされたとき」に該当し、着替えの時間は労働時間と判断される可能性が高くなります。
三菱重工長崎造船所の判例では「実作業の終了後に事業所内の施設において洗身等を行うことは、義務付けられてはおらず、特に洗身等をしなければ通勤が著しく困難であるとまではいえない」として作業終了後の洗面・入浴時間は労働時間に該当しないと判断しています。
特に会社で着替える必要がなく、会社での着替えを義務付けていなければ労働時間として扱わなくてもよいでしょう。
会社での着替えが特に必要であれば、前記『着替えの時間が、化粧をしたり、雑談をしたりで長くて困る』と同じように着替えの時間を5分とか10分と決めて、決めた時間分だけ時間外手当を支払うという方法もあります。
政府は「働き方改革」の一環として副業・兼業を推進しています。
副業・兼業を行う社員が出てきた場合に気になるのは、残業代、情報漏えい、長時間労働の問題です。
次の4つのパターンでは残業代はどのようになるのでしょうか?
① | 月曜~金曜日はA社で1日所定労働時間8時間、土曜日にB社で所定労働時間5時間の場合
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② | A社では1日所定労働時間4時間、B社では所定労働時間5時間の場合
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③ | A社で1日所定労働時間4時間、B社では所定労働時間4時間の場合に、ある日A社で5時間働いた場合
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④ | A社で1日所定労働時間4時間、B社で所定労働時間3時間の場合にA社で5時間働いた後、B社で4時間働いた場合 |
労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されており、行政通達で「『事業場を異にする場合』とは事業主を異にする場合を含む」(昭和23年5月14日基発第769号)とあります。
行政解釈では「同一の使用者の異なる事業場で働く場合だけでなく、別使用者の異なる事業場で働く場合についても労働時間を通算する」とされています。
この部分については、「同一使用者の場合のみ通算する」という学説もありますが、ここでは、行政解釈の考え方で説明します。
①月曜~金曜日はA社で1日所定労働時間8時間、土曜日にB社で所定労働時間5時間の場合
原則的な法定労働時間(1日8時間、1週40時間)で考えると5時間オーバーしてしまいます。
「5時間分の割増賃金(25%)はA社、B社の一体どちらが支払うのか」というのが問題となります。
答え:原則として時間的に後に契約を結んだ使用者が5時間分の割増賃金の支払義務を負います。
時間外労働を発生させた使用者に割増賃金の支払義務が生じるため、A社と先に契約を締結していた場合にはB社に支払い義務があり、B社と先に契約を締結していた場合には、A社に支払い義務があります。
②A社では1日所定労働時間4時間、B社では所定労働時間5時間の場合
原則的な法定労働時間(1日8時間)で考えると1時間オーバーです。
考え方は①と同じで、
答え:原則として時間的に後に契約を結んだ使用者が1時間分の割増賃金の支払義務を負います。
③A社で1日所定労働時間4時間、B社では所定労働時間4時間の場合に、ある日A社で5時間働いた場合
原則的な法定労働時間(1日8時間)で考えると1時間オーバーです。
答え:原則としてA社が1時間分の割増賃金の支払義務を負います。
時間外労働を発生させた使用者に割増賃金の支払義務が生じるため、すでに所定労働時間8時間(A社4時間+B社4時間)の者に対して1時間超過して働かせたA社に支払義務があります。
④A社で1日所定労働時間4時間、B社で所定労働時間3時間の場合にA社で5時間働いた後、B社で4時間働いた場合
原則的な法定労働時間(1日8時間)で考えると1時間オーバーです。
答え:原則としてB社が1時間分の割増賃金の支払義務を負います。
A社で5時間働いた時点ではB社の契約と合計しても8時間なので、割増賃金の支払義務は生じませんがB社で4時間働くと1時間の超過することとなるためB社に支払い義務が生じます。
※これらはあくまでも、労働者としてA社、B社で働いた場合ですので、自営で働く場合や請負・委託契約によって労働者ではない者として働く場合には労働時間の通算という問題は生じません。
正直、①、②はともかく③、④を会社が把握するのはなかなか難しいのではないかなと思います。
厚生労働省が出している副業・兼業の促進に関するガイドラインでは、 「労働時間や健康の状態を把握するためにも、副業・兼業の内容等を労働者に申請・届出させることが望ましい。」 とされていますが、
変形労働時間制等により日々の労働時間や1週間の労働時間が異なる場合 サービス業のアルバイト等でシフトによって労働時間が異なるという場合
等に、労働者が兼業先に正確に申請・届出できるか疑問です。
残業代の問題だけでなく、情報漏えい、長時間労働、労災等、様々なリスクが増加します。
副業・兼業を積極的に推進する場合には、これらのリスクに備えてルールを整備しておくことが大切です。 | |
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社会保険労務士山口事務所は、社員が仕事と子育てを両立させることができる、働きやすい職場環境作りに取り組んでいます。