社会保険労務士法人山口事務所
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残業の計算方法は複雑で、きちんとしている会社さんでも間違っていることがあります。
残業計算で間違いやすい事項について集めてみました。
”残業申請は1日30分単位で30分未満は切り捨て”
”1時間当たりの単価を計算するときに円未満の端数を切り捨て”
こんな処理をしていませんか?
1日の労働時間は1分単位で計算しなければならず、1時間あたりの単価も切り捨ててはいけません。
残業計算、賃金計算で違反とならない端数処理を下記にまとめてみました。
未払い賃金が発生しないよう、計算方法をご確認ください。
①1日の労働時間の1時間未満の端数 | 1分単位で計算 | |
②1ヵ月の時間外労働、休日労働、深夜労働各々の時間数の合計の1時間未満の端数 | 各々の時間数の合計の30分未満を切り捨て、30以上を1時間に切り上げ |
②で30分未満を切り捨てることができるのは1ヵ月の総時間数です。1日単位で30分未満を切り捨てることはできません。
③1時間当たりの賃金額・割増賃金額の円未満の端数 | 50銭未満切り捨て、それ以上を切り上げ |
④1ヵ月の時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の割増賃金の総額の円未満の端数 | 各々の割増賃金の総額の50銭未満切り捨て、それ以上を切り上げ |
⑤1ヵ月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額) | 50円未満切り捨て、それ以上を100円に切り上げ |
上記は違反とならない端数処理ですので、これより有利に取り扱うことや②の場合に1分単位で計算することもできます。
※就業規則等で上記より有利な取り扱いを規定している場合には、就業規則が優先されます。
振休と代休、きちんと理解していないと未払い賃金が発生してしまいます。
使い方を間違っていないか、今一度ご確認ください。
あらかじめ休日を労働日(勤務日)と振り替えて、他の労働日を休日とします。
休日と労働日を交換(振替)したので元の休日は休日ではなく労働日となり、休日労働になりません(休日労働の割増賃金不要)。
※振り替えた結果、1週間の労働時間が40時間を超えた場合等には超えた時間について時間外割増賃金の支払が必要です。
休日労働をさせた後、その代償措置として以後の労働日の労働義務を免除します。
代わりとなる休日を与えても、すでに休日労働を行っているので休日労働(又は時間外労働)となります。
このように、前もって休日と労働日(勤務日)を交換(振替)しておくと「振休」
休日に勤務させた後で労働日を休日とした場合には「代休」となります。
振替休日の要件や割増賃金は下記のとおりです。
振休(振替休日) | 代休(代替休暇) | |
要件 | ①就業規則に規定 ②4週4日の休日を確保したうえで、振替休日を特定 ③遅くとも前日の終業時刻までに本人に予告 | 特になし (ただし、制度として行う場合には就業規則等に具体的に規定) |
休日の指定方法 | 振替後の休日をあらかじめ使用者が指定 | 特になし(労働基準法上、使用者に代休を与える義務はない) |
割増賃金 | 同一週内の場合は不要 休日を翌週以降に振り替えた場合に、1週間の労働時間が法定労働時間(原則40時間)を超えることとなれば超えた時間について割増賃金の支払が必要 | 休日出勤日について割増賃金が必要 ただし、法定労働時間内(原則週40時間以内)であれば割増は不要 |
※法定休日は週1日ですので、週休2日制の場合には2日のうちいずれか1日労働させても休日労働とはならず時間外労働となります。
ただし、就業規則等で日曜日は法定休日の割増賃金(1.35)を支払うと規定している場合には、土曜日が休みでも日曜日の労働に対して法定休日の割増賃金の支払いが必要です。
Aさんは子どもが熱を出したので病院へ行き、3時間遅刻して11:30に出勤しました。
3時間の遅れを取り戻すためにAさんは終業時刻17:30から3時間残業しました。
さて、17:30から20:30までの3時間は割増賃金の支払が必要でしょうか?(12:00~13:00は休憩時間)
通常の賃金を支払えばよく、割増は不要です。
時間給1,000円であれば11:30から17:30の5時間分と、5,000円、17:30から20:30の3時間分3,000円合わせて8,000円がその日の給料となります。
実労働時間が法定労働時間(8時間)を超えなければ通常の労働時間と同じ給料を支払えばよく、割増は要りません。
割増賃金が必要な時間外労働となるのは20:30からです。
1時間あたり1,250円(1,000円×1.25)、22:00を過ぎた場合には深夜割増もつくため1時間1,500円(1,000円×1.5)の支払が必要となります。
”管理職には残業代は支払わなくてもいい”
と理解されている場合には残業代が未払いになっているかもしれません。
労働基準法では「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」については労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を除外することとされています。(労働基準法第41条)
”監督若しくは管理の地位にある者”とはいわゆる管理監督者のことです。
管理監督者については労働時間、休憩、休日について労働基準法では制限をしない。
つまり”残業や休日出勤を行っても残業手当を支払わなくてよい”となっているのです。
しかし、”制限をしない”としているのは労働時間、休憩、休日についてであって、深夜労働については適用を除外されていません。(深夜労働とは22:00~5:00の間の労働)
なんとも分かりにくい話なのですが、労働基準法では労働時間と深夜業は区別されているため、労働基準法41条の適用除外の中には深夜業は入っていないのです。
そのため管理監督者であっても深夜に労働した場合には深夜労働に対する割増賃金を支払いが必要となります。
※管理監督者とは、単に役付社員ということではなく、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、実際に労働時間等の規制になじまないような立場にある社員さんのことです。
ここでは管理監督者の判断基準については詳しく触れませんが、労働基準法上の管理監督者に該当するかどうかについても誤解が多いため注意が必要です。
厚生労働省パンフレット「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」を参考に皆さんの会社の管理職社員さんが管理監督者にあたるかどうか確認してください。http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf |
また、管理監督者は何時間働かせても構わないわけでもありません。
長時間労働で健康を害することがあれば、会社が責任を問われることとなります。
管理監督者であっても働き過ぎの防止と深夜労働の割増賃金支払いのために、タイムカード等による時間の管理をしておきましょう。
社会保険労務士山口事務所は、社員が仕事と子育てを両立させることができる、働きやすい職場環境作りに取り組んでいます。