社会保険労務士法人山口事務所
広島県広島市中区千田町1-4-15 タカノ橋ビル3F

主な対応地域:広島市、廿日市市、大竹市、呉市、東広島市、福山市、安芸郡など広島県全域。
受付時間: 8:30〜17:00(土日祝日除く)

無料相談実施中(30分程度)

お気軽にお問合せください

送検(司法処分)事例

送検(司法処分)事例

労働基準監督官が調査を行った結果、重大・悪質な場合には送検されることがあります。

毎年約1,000件の事業所が送検されているようです。

公表されている送検事例の中から、注目すべき事例をご紹介します。

事例1 大手靴小売会社の取締役と店長を書類送検

東京労働局過重労働撲滅特別対策班〈通称「かとく」〉は、大手靴小売会社並びに同社の取締役及び店舗責任者2名を、労働基準法違反の容疑で、平成27年7月2日、東京地方検察庁に書類送検した。

渋谷区に本社を置き、全国各地で靴販売を中心とした小売店を多店舗展開する会社が運営する、都内の2店舗について、
(1) A店において、従業員2名に対し、法定労働時間である1週40時間を超えた違法な時間外労働を、平成26年4月13日から5月10日までの4週間において、100時間前後行わせ、また、
(2) B店において、従業員2名に対し、平成26年4月11日から5月10日までの間に、労働基準法第36条に基づく時間外労働に関する協定で定める限度時間を超えて、100時間前後の時間外労働を行わせていたものである。

東京労働局ホームページ 送検事例平成27年度

http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/souken_jirei/backnumber/xxx_001/_122254.htmll

 


 

この事例は平成27年4月に発足した過重労働撲滅特別対策班(かとく)による初の送検事例として注目を集めました。

A店では36協定の締結届出なく違法に残業を行わせ、B店では36協定で定めた上限を超えて違法に残業を行わせたとして書類送検されています。

残業代はすべて適正に支払っていたようです。

この会社は過去にも複数の店舗で是正勧告を受けていたにもかかわらず、改善されなかったため、送検となったようです。

 

”かとく”とは、

企業に対する監督指導や捜査の経験が豊富な労働基準監督官で構成された、過重労働事案に対する特別なチームです。

複数の支店において労働者に健康被害のおそれがあるものや、犯罪事実の立証に高度な捜査技術が必要となるもの等を担当します。

 

各労働基準監督署には管轄があり、監督指導を行うのは管轄の地域にある事業所(支店、店舗)についてです。

全国展開する大企業や複数の事業所のある企業の場合は、支店や店舗だけ指導を行っても支店や店舗だけで改善できることには限りがあり、なかなか改善されないことがあります。

”かとく”の主な役割はこういった大企業の過重労働の問題に対応することです。

 

 

例えば、人員不足等で36協定の上限を超えて残業を行っていることについて是正勧告を受けた。

しかし、支店には社員を採用する権限がない。かといって、支店の営業時間を変更したり、営業方針を変更する権限もない。

 

支店の社員が気合いで減らせるような残業であれば良いですが、普通そんなことはありません。

こうなると、会社の制度を見直す権限のある部署や人事権のある本社の協力がなければ支店はお手上げです。

管轄の労基署がいくら是正勧告を行っても改善できません。

支店では、なんとかしなければ とタイムカードを打刻した後に残業をしたり、虚偽の報告を行うかもしれません。

 

こういった支店が複数あると、”かとく”の出番となるのです。

労働基準監督署の管轄を超えて全社的な調査・捜査により実態解明を行います。

 

 

事例2 居酒屋経営者を逮捕・送検

新宿労働基準監督署は、平成27年3月2日、居酒屋経営者を最低賃金法違反の疑いで逮捕し、平成27年3月3日、東京地方検察庁に同経営者を身柄と共に送検し、当該居酒屋を経営する法人も書類送検した。

〈事件の概要〉

 被疑会社は、東京都杉並区内で、不動産の賃貸業及び居酒屋3店舗を営む事業主、被疑者は同会社の代表取締役として、その事業全般を統括して管理する者であるが、被疑者は、被疑会社の業務に関し、法定の除外事由が無いのに、労働者Aの平成25年6月分賃金108,406円の全額をその所定支払期日である平成25年6月30日に支払わず、もって法で定める東京都最低賃金(当時の時間額850円)以上の賃金を支払わなかったもの。

<参考事項>

 平成23年1月1日から平成25年8月16日までの間、被疑会社の元労働者から、勤務した最後の月の給料が支払われない旨の賃金不払に関する申告が4件あった。 

 当署ではこの申告を受け、被疑者に対して、不払賃金を支払うよう行政指導を行ったが、被疑者はその行政指導に従わなかった。

 被疑者は、当署による再三の出頭要求に応じず、罪証隠滅のおそれもあったことなどから、逮捕のうえ、送検したものである。

東京労働局ホームページ 送検事例平成26年度

http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/jirei_toukei/souken_jirei/backnumber/_121377.html

 


 

労働基準監督官は司法警察官の権限により、労働関係法違反について警察官と同じように捜査を行ったり、逮捕、送検を行うことができます。

 

〔参考条文〕

労働基準法

第百二条

労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う

最低賃金法

第三十三条

労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を行う
労働安全衛生法第九十二条労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を行なう

 

実際のところ逮捕されるのは非常にまれですが、労働関係法違反もれっきとした犯罪ですので状況によってはこの事例のように逮捕されます。

 

報道されたものでは次のような事例がありました。

  • 平成28年3月岐阜労働基準監督署が外国人技能実習生を違法な長時間労働をさせたなど、最低賃金法と労働基準法違反の疑いで、縫製業の事業主と外国人技能実習生受け入れ事務コンサルタントを逮捕
  • 平成29年8月那覇労働基準監督署が違法な時間外労働と割増賃金の不払いがあったとして、文房具やオフィス用品の販売を行う会社の社長と店長を逮捕
  • 平成29年9月彦根労働基準監督署(滋賀県)が従業員2人に3ヵ月分の賃金を支払わなかったとして最低賃金法違反の疑いで木造建築工事業の社長を逮捕

これらの事例は、行政指導を繰り返しても改善されなかっただけでなく、出頭に応じない、虚偽の帳簿書類を提出する等悪質であり、証拠隠滅や逃亡の恐れがあった等の理由から逮捕されています。

 

 残業対策とは、決して労働者から搾取するための対策ではありません。

また、単に残業代を削減する対策でもありません。・・・・・ 

①変形労働時間制と定額残業代の活用

②賃金・残業制度の見直し

詳しくはこちらをクリック

事例3 縫製業の事業主等を逮捕・送検

虚偽の帳簿書類の提出や臨検妨害などを繰り返した事業主らを逮捕した上で、賃金不払等
により送検

〔捜査経過〕

  • 縫製業の事業場で実習中の技能実習生から、事業場から支払われている賃金が最低賃金額を下回っているなどの申立がなされた。
  • 事業場に立入調査を実施したところ、事業主と監理団体の代表者は、労働基準監督官に対して虚偽の記載をした帳簿書類を提出するなどし、さらに、監督官が関係先に立ち入るのを妨害したり、関係者との口裏合わせなどを繰り返していたことが発覚したため、事業主らを逮捕した。
  • 捜査の結果、事業場に所属するすべての技能実習生4名の賃金について、月額6万円程度しか支払われておらず、また、時間外・休日労働に対しても時間単価が400円程度となっており、最低賃金額に満たない賃金及び割増賃金、総額約500万円が支払われていなかった。
  • 逮捕した監理団体の代表者を取り調べた結果、この事業主の賃金不払について関与していることが明らかになった。

〔被疑事実〕

○ 実習実施機関(法人)及び事業主、監理団体の代表者

最低賃金額以上の賃金を支払っていなかったこと。

違反条文 → 最低賃金法第4条(最低賃金額以上の支払)

時間外・休日労働に対し、法定の割増率以上で計算した割増賃金を支払っていないこと。

違反条文 → 労働基準法第37条(割増賃金の支払)

虚偽の陳述、虚偽の記載をした帳簿の提出、臨検監督の妨害を行ったこと。

違反条文 → 労働基準法第120条(虚偽陳述等の罰則)

厚生労働省ホームページ 

外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導、送検等の状況(平成28年)

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000174260.pdf

 


 

技能実習生を含め外国人労働者については、労働条件等に問題があることが多く、外国人技能実習生の実習実施機関は労働基準監督署の重点監督の対象となっています。

技能実習生は日本で働く他の労働者と同じように労働関係法令が適用されますが、違反が多いため労基署の重点監督のほかにも、出入国管理機関との相互通報制度、出入国管理機関との合同監督・調査も行われています。

 

公表されている送検事例や監督指導事例を見てみるとこの事例のように月給5~6万円、時間外・休日労働の時間単価が300円~500円といったものもけっこうありました。

〔外国人技能実習制度〕

技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で一定期間に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度です。

開発途上地域等の経済発展を担う人材育成に協力することが本来の目的です。

送検(司法処分)状況


労働基準監督年報によると、平成28年に労働基準監督官が司法処分として検察庁に送検した件数は890件でした。

 平成25年平成26年平成27年平成28年
全件数1,0431,036966890

労働基準法違反

474400402380
安全衛生法違反560628550497
最低賃金法違反881413
賃金の支払いの確保等に関する法律違反1

厚生労働省労働基準局労働基準監督年報をもとに当事務所作成

お問合せはこちら

お電話でのお問合せはこちら

082-243-1954

※お客様からのお問合せに対して、営業・勧誘等はいたしません。安心してお問合せください。

フォームでのお問合せはこちら

私たちが対応します

社会保険労務士山口事務所は、社員が仕事と子育てを両立させることができる、働きやすい職場環境作りに取り組んでいます。